麦畑や出ぬけても猶麦の中 野坡2009年05月07日 05時58分50秒



  石垣の裏の斜面に踊子草  種茄子

嵐吹草の中よりけふの月 樗良2008年10月10日 06時14分42秒

飯食へば体重の増ゆ秋夕焼

秋来ればなにもせずとも名月に

道歩く青松虫に影のあり

秋の空スーツケースに詰めて行く

大崎に電車集まる良夜かな

空映すために窓ある野分後

小鳥来る昨年植ゑし街路樹に

有楽町マリオンに栗名月

秋深く特上ミノも噛切れず

パソコンを持ち秋風の成田かな

唐黍のさわぎ立たる野分かな 光甫2008年09月09日 05時53分38秒

浮いて来る青みがかつた錦鯉

栃の実の栗に似てゐる秋思かな

秋の蚊の人の来るのを待ちにけり

血を吸つてから秋の蚊の潰されぬ

講堂の縁に雀や秋扇

雲の峰安田講堂まで育つ

咲く前の本郷通のダチュラかな

青筋あげは羽根を残して死んでをり

東京大学教育学部の柿青し

金魚坂から持ち帰る金魚かな

勝た手を組で見せたる角力哉 旭翁2008年08月21日 06時35分55秒

朝顔の萎みて色の濃きところ

唐辛子赤くなれずに青きまま

荒川の足立区側に稲田から

ホップめぐらす鉄製のアーチかな

草原に草の花まで踏みにけり

草刈つてから藪からし繁茂せる

パスポート写真爽か遠く来て

文月や別れ難しを別れ来る

海風に散り敷かれをる槐かな

溝萩のない盆花を飾りけり

朝顔や毎日咲てあかれざる 富葉2008年08月16日 06時38分07秒

蝉の子の空蝉になき重さかな

掃苔や豚饅頭の臭させ

天竺へ仏典取りに初嵐

きりぎりす崖の上から聞こえけり

炎天に黒靴が吸ふ暑さかな

新涼に尾羽短き親烏

蜘蛛の囲に掛りて静か油蝉

片翅がぺつたり蜘蛛の囲に掛る

油蝉もうぢき蜘蛛に喰はれけり

油蝉暴れ蜘蛛の囲ぼろぼろに